「DNAがわかる本」(中内光昭)

「細胞の身になって」DNAを解説している本

「DNAがわかる本」(中内光昭)
 岩波ジュニア新書

DNA鑑定、DNA検査、
遺伝子治療、遺伝子検査、
遺伝子組換食品、iPS細胞、…。
私が若い頃には
DNAや遺伝子などは
日常に登場しない学術用語だった
ような気がするのですが、
今は新聞やネットで
見ない日がないくらい
次から次へと話題が登場しています。

でも、DNAって何?
えっ、セ・リーグで
昨年2位だったチーム?
それはDeNA。
ちょっと知識のある方であれば
デオキシリボ核酸の略、
と答えられるのでしょうが、
ではそれって何?と聞かれると…、
正しく答えられるでしょうか。

そもそも私の世代は、
高校の教科書(当時の理科Ⅰ)では
メンデルの交配実験の記述が主であり、
DNAなどは記載されていなかった
ような気がするのです(単に
私が覚えていないだけかも
しれませんが)。

そんなDNAの学び直しに
適しているのが本書です。
とかく難しく書かれてある本が多い中、
きわめてわかりやすく
書かれてあるのですが、
本書の特徴は「わかりやすさ」よりも
「面白さ」なのです。

どこが面白いか?
それは生命の主体を
「細胞」に置いていること。
私は生物1個体が「主」であり、
その個体をつくっている細胞は
「従」であるという見方を
無意識のうちにしていました。
しかし最近の知見では、
生命の主体は「細胞」1個1個であり、
生物1個体はその集合体であるに
過ぎないというのです。
著者はその立場を取り、
「細胞の身になって」DNAを
解説しています。

第Ⅰ部冒頭から「メンデルを忘れよう」。
えっ、いいんですか?
遺伝=メンデルと教え込まれた
(今は教えている我が身)者としては、
のっけから驚きです。
そしてDNAを
細胞の演じる「シナリオ」と位置付け、
そのシナリオが
「どこに書かれてあるか」
「何が書かれてあるか」
「どのように書かれてあるか」
「どのように演じられるか」
説明しているのです。

あとがきを読むと、
著者は発生生物学が専門で、
分子遺伝学については素人であり、
DNAの専門家ではないとのこと
(一般人から見ると
十分に玄人なのですが)。
多分、ちょっとだけ畑が違うから、
隣の畑のことが持ち主よりも
よく見えてくるのでしょう。

大人の学び直しに、
そして中学校3年生が
ちょっとだけ背伸びして読むのに
適した一冊です。

※中学校3年生で
 「遺伝」について学習します。
 その発展的教材としてお薦めします。

※ただ、発行年が1997年と古いため、
 最新の知識が反映されていない
 箇所も散見されます。
 この路線での改訂版出版を
 期待したいところです。
 岩波書店さん、
 よろしくお願いします。

(2020.1.30)

Darwin LaganzonによるPixabayからの画像

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